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全12巻完成モデル

「訳者まえがき」から抜粋

本書の内容

 『天界の秘義』第六巻は、  旧約聖書「創世記」第32章から第38章までの、全七章にわたる広がりを見せます。しかも内容的には、山場が四つあります。

 第一の山場は、ヤコブの帰還であり、エサウの出迎えです。二十年以上にわたって、二人の兄弟は別れて暮らしました。ヤコブは叔父のラバンのもとで働き、二人の妻と二人の女奴隷、さらにその子供たちと家畜を連れて故郷に帰りますが、エサウの出迎えを恐れます。幸運にも二人は、平和裡に挨拶を交わし、たがいに譲り合いながら、今後の生活を調整していきます(32-33章)。

 本書に記されているように、この出会いには、深遠な内的意味が隠されています。それは主の自然性の中で、真理が善に屈服したことを表わします。これは主の神人性完成のための重要な前進でした。同時に人の再生のイメージも浮き彫りにします。人は、「信仰的真理」優先の生活から、「仁愛的善」優先の生活に移行することで、新しい意志と新しい理性をいただきます。

 第二の山場は、急遽おもむきを変え、きわめて悲惨で残酷な物語が展開されます。それは、土地の要人の息子シケムが、ヤコブの一人娘デナに手を出したことがきっかけとなり、ヤコブの息子の中、とくにシメオンとレビが率先して、ハマル一族をだましたあげく、全員殺戮し、その町を壊滅させたことです(34章)。それがいかに理不尽であったかは、当時の不文律からも推察されます。しかしこの物語にある内的意味は、これまでのアブラハムからヤコブまでの物語の背後にあるものと、性質を異にします。

 それからヤコブの系図(35章)と、エサウの系図が示されます(36章)。

 第三の山場は、ヨセフ物語の始まりです。ヤコブが愛妻ラケルに産ませた子のヨセフは、父親の格別な寵愛のもとに成長していきますが、自分の見た夢を紹介したことがきっかけで、兄たちの嫉妬の的となり、殺されかけながらも、かろうじてエジプト行きの隊商へ奴隷として売られました(37章)。それから後のヨセフの運命、ヤコブの十人の息子たちのエジプト行き、最終的には、ヤコブ一族のエジプト移住が待っています。

 第四の山場は、ユダ物語です。かれはヤコブの息子の中では四番目であり、やがてユダヤ民族として成長し、後代にはユダヤ王国を建設するまでになりますが、創世記の中のユダ個人は、決して模範的人物ではありません。三人の息子がいても、いずれも邪悪で、孫が生まれません。父親のユダは、長男の嫁のタマルを知らずして犯し、子孫をもうけます。ユダヤ民族が、主の到来時、いかに堕落していたかを予想させるものになります。

 さて、第五巻の「まえがき」にも記したとおり、特筆すべきは、本書に盛られている寓話性、象徴性、表象性です。著者は繰り返し、〈みことば〉の一語一語には、その背後に内的意味があり、それを辿っていかないかぎり、〈みことば〉の真意は把握できないと力説します。本書を紐解くことは、霊的ヒマラヤの登攀に似て、吹雪の中、殺伐とした風景が延々と連なることがあります。しかし忍耐をもって一歩一歩前進することによって、視界が開けてくるものと信じます。

 

天界の秘義 第六巻
Arcana Caelestia vol.6